76世代と頭につく時は大抵、同世代の誇らしい活躍話を聞く時だ。
しかしロスジェネと締めくくられる時は大抵、場所を失い、生きがいを失い、誇りを失い、そして犯罪者となった同世代の話を聞く時だ。
就職氷河期だの何だのと報道される中繰り返されるのは「2000年以降最低の就職内定率」という言葉だ。そう、もっと酷い年があった。1998年、1999年だ。私達ロスジェネが就活をしていた年。ナメんな若者、私達はもっと酷い時代を生き抜いてきたと言いたくなることがある。
そんな酷い時代、就職できなかった同級生が沢山出た。一部は自分でビジネスを始め、一部は成功し、76世代と取り上げられた。しかし残りはどうだろう。年齢的にもアラフォーに突入し、そろそろ人生折り返したよねというタイミングに入ってから、犯罪者となった同世代の報道を目にすることが増えたように思う。「また同世代か」と思うこともまた、ずいぶん増えたようにも思う。
先日逮捕された黒子のバスケ脅迫事件の犯人もまた、報道されてみれば同世代だった。今日、初公判があったという。「被告人の意向で、長文の意見書が読み上げられ、犯行の動機や、自分の思いなど、全て被告が語ってしまうという異例の展開」だったそうで、その概要をリンク先の記事から知ってやるせない気分になった。同じような思いを抱えながらも、犯罪を犯さずにじっと生きている同世代が一体どれほどいるのだろうか。思い巡らせるだけで目の前が暗くなる。
※意見陳述全文1
※意見陳述全文2
そんな私が最近、怖くてしかたがないCMがある。
リクルートのアルバイト情報誌、タウンワークのCMだ。
CMでは、香取慎吾くんがバイトリーダー的なポジションを務めていることが伝わってくる。
それがもう、リアルすぎて泣けるのだ。
香取慎吾くんは私と同じ学年のロスジェネど真ん中。その彼が正社員ではなくバイトリーダーを務める姿を演じている。なんというリアルさ。ちょっとだけ上の、ロスジェネと呼ばれずに団塊ジュニアと呼ばれた世代の武井壮が店長だ。ドラマ仕立てのフィクションCMでこんな現実突きつけてくれなくてもいいのに、と感じられてならない。
劇中の香取くんを慕う年下のバイト仲間達はいずれ、学校を卒業したり夢をつかんだりすることで、バイトをやめて巣立っていくのだろう。でも香取くんには行くところはない。バイトリーダーといえば聞こえはいいが、非正規雇用として歳を重ねていくというわけだ。そんな夜、一体何を思って自分一人の家に帰るのだろうか。もはや同窓会にも行かないだろう。合わせる顔がないのだろうという想像はつくが、そうやってますます距離は離れ、孤独は増していく。そして考えるまでもなく、香取くんが象徴するロスジェネ世代のバイトリーダー達は日本中に、珍しくもない数で存在する。きっとバイトリーダーですら無い同世代も多かろう。
きっと考え過ぎなんだろうと思う。妄想甚だしいにもほどがあるんだと思う。香取くんはあの持ち前のキャラクターでCMに採用されているに過ぎないのだろう。
でもそれでも、ロスジェネと言われてしまう世代の有名人の一人である香取くんがあの役柄を演じていることが、強烈な現実を突きつけているようですごく怖いのだ。同世代への応援歌ではなく、ただただそっと直視したくないリアルを指さされているような心持ちに。
♪タウンワーク タウンワーク バイトはー君にー♪
♪見つけてもーらうとーきーを 待ってーいーるー♪
違うよ、見つけて欲しいのは自分だよ、そう思う同世代はどれぐらいいるんだろうかと頭に浮かばずにはおれず、CMソングまでが怖い存在に聞こえてくる。
笑顔の香取くんをTVで見る度に、そんなことを考えている。