2014/04/30

怖くて買い物ができない話

自転車を買いました。
自転車欲しいと言い始めてから2,3年。
もはや一部で買う買う詐欺とまで言われはじめましたので、「錆びきっているとはいえ、ママチャリがあるからいかんのだ、追い込め自分!」と粗大ごみに出しまして、先日ついに自転車屋さんで予約してまいりました。タイヤの泥除け、自転車立てかけるスタンドや、リアキャリアをつけてもらって5月中には手元にやってきそうです。万歳。

さて、ここまでの道のりを振り返ってみると、正直な所「紆余曲折」ではなく「大量の停滞期間」により時間がかかってしまっている事に気づきます。

なぜそんなに停滞したのかというと理由はひとつ「自転車屋が怖かった」に他なりません。「脱ママチャリをしたいだけ」の自転車素人にとって、自転車屋は鬼門でした。

勇気を振り絞って訪問してはあまりの怖さに心折れ、自転車屋恐怖症になって近づけなくなり、数ヶ月ののちに立ち直ると、おもむろに前回の自転車屋訪問時の敗北理由を振り返ってから、自分に足りなかった知識を備えて「よし今度こそは」と思って訪問する、ただし前回怖かった店とは別の店……とまた別の理由で心折れ、自転車屋が怖くなって……を相当繰り返しました。怖い店に当たりたくないので事前にネットで調べて、メールを送って反応を見たりとか、やりとりしながらここいいかもと思って訪問すると、メールの人と店員は違うのかやっぱり怖かった、というのもありました。

なぜあんなに自転車屋の店員さんたちは、自転車購入道マッチョなのでしょうか。たまたま遭遇した店員がそうだったのではないかという指摘もあると思いますが、私結構店回りました。勇気を振り絞って色んな店員さんに話しかけました。あと、誰もが引いちゃうぐらいキモい客ではなかったと思います、私(多分だけど)。
でも、みんな怖かったです。
知識がなくて、何から聞いていいのかすらわからない私にはたいそう怖かったです。

プライドとこだわりをお持ちなのはわかりますが、ええと、要は素人に冷たすぎます。自転車のプロなのかもしれないけど、接客のプロじゃないよお前!と言いたくなったのは何人にのぼることか。

いや、分かるんですよ、最近の急なサイクリングブームでミーハーな自転車乗り志望が店にわんさかやってきて、あーだこーだわけわかんないこと言ってきて、マジ辟易してるんだろうなーってことは。しかもそういう奴らに限って自転車の乗り方がなってなくて、そのせいでちゃんとした俺達自転車乗りまで批判される日にゃあ、ファッション自転車乗りなど滅びてしまえとか思ってることはわかるんです、ええ分かりますとも。でも全員がそうじゃないだろ、少なくとも私は違うし、困ってるんだから助けてくれよ、冷やかし客じゃないんだからさ(´・ω・`)って、毎度毎度落ち込みながら帰宅しました。この2ヶ月ほどは一気に5店舗ほど回って全て討ち死に。泣きたい気分で毎度毎度しょんぼりです。

ちなみにこういうこと書くと「そんな困ってるなら自分に相談してくれればよかったのにー」という方いらっしゃいますよね、ええ、知ってます。でも私が相談した方はみなほぼ笑顔で「自転車組み立て」をオススメしてきましたよね……私が求めてるのはそんな本格的なものじゃない!もっと気軽なの!そんな何十キロも走らないの!街乗りなの!

というわけで、自分の周りの自転車に詳しい人はみんな「俺の(私の)仲間に引き入れようとする怖い人」に違いないと、初手の7名ほどで勝手に判断した私は周りに聞くのを諦めました。いやもしかしたらそうではない自転車乗りさんも周りにいらっしゃったのかもしれませんが、ええとあなたに辿り着く前に私は心が折れました、はい。でまあそんなわけで、自転車屋さんなら色んな客が来るから初心者にも親切なんじゃないのかなーと思ったのが自転車屋マゾ体験ツアーの始まりでした。

まず知識の無さ過ぎる私と自転車屋さんの間には幾つもの溝がありましたが、大きなものがこの3つ。

(1)「軽いのが欲しい」問題
私:ママチャリより軽ければOKと感じてしまうレベル
店:値段に応じて軽さが変わるので、予算か希望の重量かどちらか教えろやコラと思っている

(2)「予算」問題
私:そもそもどれぐらいの価格だと、どれぐらいのものが買えるのかをそもそも知りたい。3万と5万と7万と10万は何が違うの?変な買物はしたくないから、妥協できる違いと妥協できない違いの境界線を知りたい。 その上で自分のお財布と相談して、どれぐらいなら出せるかなあって検討したい。ママチャリと比べればみんな高く見えるから。
店:値段によって性能が違うのは自明、さっさと予算言えやボケ、と思っている

(3)「デザインの好みは重要」問題
私:予算と機能性で絞っていったらきっと数種類に絞られてしまうに違いない、そこから好きなデザインや色の自転車を選びたい
店:まず好みを絞って、そこから詰めていかないと範囲広すぎて選べないんだよわかってないなあ、と思っている

この3つの溝が大きくて、この溝の存在に気付き、自ら調べて溝を埋めて店員さんに話しかけないとそもそもコミュニケーションが成り立たないのだということを分かるまでに、結構時間を要しました。しかも、そもそも知識がないから「これぐらいで埋まったかな」と思って意気揚々と店に行くと「それは埋めたって言わねーんだよ、もっと調べて絞り込んでこいよバーカ」みたいな感じで返り討ちに逢うこと甚だしく、その度にトボトボと帰宅する羽目になりました。

特に(3)は気付くまでに結構時間かかりました。なんで「カタログ見てもうちょっと絞ってきてください」ってため息付きながら言われちゃうのかなあって思ってたんですけど、気づいてからは「ああ、何でも売ってる車屋さんに、コンパクトカーか軽のどっちかで悩んでるんですけど、って突撃してしまい『せめてデザイン的にマーチとフィットとムーヴとラパンといろいろあるでしょ、どういうのが好みなのか言えよ、話はそれからだ』って言われてたってことなんだなあ」とは思いました。思いましたけど、でも「小さくてたくさん入る車ください!」って車選びでも言うよね、とはいまだに思ってますけど(根深い

まあそんなわけで、アバウト過ぎる質問を繰り出しすぎた私は店に行く度に「この客相手にする必要なし!」みたいな対応を取られて、どんな質問をしていいのかさえもわからなくなって、対自転車屋限定のひきこもりになりかけていました、正直な所。いや、対人コミュニケーション得意な人なら行けるんでしょうけど、私はそもそも人見知りが強いので(違うでしょと思っている方、それは私が仕事用にかぶっているネコの内側を知らないだけですよ!)、ちょっとした応対ですぐめげてしまうんですよね。

しかし私も大分学習しました。時には美容院でmonoマガジンを読み、そこから得た知識をもってまたネットの海に潜り、自転車屋さんから「それは質問になってねえ」と返り討ちされないような状態にまで絞りこみ、「これとこれとこれで悩んでるんですけど、優先したい条件はこれこれで……その場合どれがおすすめですか?」と質問できるまでになりました。頑張った、私。自分で自分を褒めたいぐらいだ!

そして先日行きましたついに自転車屋。

実際に自分が気になっている自転車がさわれそうなところということで、大きめの自転車屋を選びました。大きめなら店員さんも色々いるだろうし、というのもありました。

そして、比較的優しそうな、そして詳しそうな店員さんに意を決して質問を投げかけてみたところ、ちらっと一瞥されて「その3台なら値段の差が性能の差なんで、後は決めるしか無いですねご自分で。」と冷たく言い放たれました。「あぅ……あ、あ、そう、そうなんですね、ありがとうございます……かんがえます………(消え入る声で」と返すしか無い私、無残。

でもまあ、もうわかりました。そこまで絞り込んだならもう好みだ、というレベルまでに私は調べたのだということは。言われ方がきつくて、あと「ケッ素人が」みたいな目をされた(被害妄想)ので心が折れかけたけど、あとは自分で決めればいいんですよと言われたんだということはわかりました。

ただ、お前がいる店では買わねーよ、とも思いました。

ええ、子供じみているのはわかっています、わかっていますけど、でも買うだけじゃなくて、その後メンテナンスとか色々相談するかもしれないわけじゃないですか、どうせなら少しでもいい人がいるお店で買いたいよ!だったら、これまでの中で「少なくともネットでの応対は親切だった」お店で注文しよう、そうしよう、そう思いました。

が、ここで先ほど返り討ちにあった(と、私が勝手に思った)店は、近所にもう1店舗「レディース専用店」なる女性専用店舗を構えておりまして、最後そこだけ寄ってから帰ろうかな、と思いました。リア充キラキラ自転車女子客にあふれてて怖そうだけど、違う意味で私めげそうだけど、あるいは可愛いだけの自転車しか売ってなかったらどうしようとかそういうのもあるけど、でも折角だし行ってみよう、そうして足を運びました。

……結論から言うと、私が最初に行くべき店はこのレディース店でした。
その店は、物腰柔らかく丁寧な対応に長け、そして知識溢れる優しいお兄さんたちであふれていました。
ついでに言うと、おいてある自転車も全体的に私好みでした。

なんだよもう、この店員さん達だったら私のアバウトな質問に対しても、選択肢を示しながら一緒に自転車を絞り込む手伝いをしてくれたんじゃん!!!!最初からここにすればよかったよー、レディース専用店という表記に変な色眼鏡を掛けて見てしまって、最後まで避けてて本当に申し訳なかったと心底土下座したい気分でした。

店を見回すと、女性専用店と言いながら男性一人客もちらほら。うん、分かる、分かるよ、この店親切だもんね、レディースとか何とか取っ払って、こっちの店の方選びたくなる気持わかるよ、って男性一人客に握手しに行きたい気分にすらなりました。この店は、親切な自転車店を求めて辿り着いた客達にあふれていました。とまあそんなわけで、自分が絞り込んだ内2台がこの店に運良くあったのもあり、最終的にはもう色の好みで購入を決めました。

それにしても、たまたま「レディース専用」的な表記になっているけれど、要は「詳しくない人向けの親切な店」ってことだなあと感じました。「詳しくない人向けの親切な店」って自転車にかぎらず色んなジャンルで必要とされてますよね。まあ自転車においては、詳しくない人の女性比率が圧倒的に高いから、女性向けっていう取り扱いになったんでしょう。そしてその他のジャンルも「女性のほうが詳しくない」場合が多いので、総じて「客にやさしい店」が女性向け店舗と言う扱いになっていることは多い気がします。

ただ、多くの女性向け店舗って「女性が入りやすい内装デザイン・色?」「イケメンが多い?」「女性向け商品品揃え?」みたいな方向に走っていて、本来女性が立ち寄らない理由「店が怖い」根本理由の解決に、案外なってなかいんじゃないかと自転車の一件で気付く羽目になりました。

よく女性は「雰囲気でなんとなくとか言いがち」とバカにされがちですが(苦笑)、それって結構重要だと思うんです。内装や商品ラインナップからくる影響以上に、そこの店員さんが醸し出す雰囲気を、女性は入り口から感じ取ってるんじゃないかなーと思うんですよね。丁寧で親切な店員さんがいるお店は、自然とそういう雰囲気が出ていると思います。そういう客にやさしい店に、女性はピンとくるのです。そしてそういう店は、実は男性にも優しい。女性専用にしておくのはもったいない。

逆に、レディース専用という表記に当初の私が引いてしまっていたのは、形だけ女性向けにしてある店が世の中には多いからなのかもなあ、とも思ったのでした。

あ、完全なる余談ですが、女性がイケメン店員に惹かれるのは、見た目の造作だけではないと思います。ぶっちゃけイケメンは、フツメン・ブサメンと比べて、性格がひねくれておらず、優しくサービス精神にあふれている「率が高い」です。イケメンが多い店に女性が行きがちなのは、見た目の良さに惹かれているだけではなく、その店がそもそも親切で丁寧な店だからの可能性も高いんじゃないかなと、思います。イケメンに溢れる店舗をバカにしないことです。案外男性にとってもいい店かもしれないのですから。そして本当にどうでもいいですが、自転車屋の店員さんは別にイケメンではなかったです。でもとても親切で丁寧でした。

ま、兎にも角にも、色々ありましたが自転車買えて良かったです。