2015/09/30

<御蔵島>到着編 ~tokyo reporter 島旅&山旅~

「東京砂漠」だなんて言葉は、東京都のたった一側面を表したに過ぎません。
都心から西に向かえば山があり、東京湾を出て南に向かえば島があります。

そんな、ともすれば忘れられがちな東京の都会以外の顔を探索する、東京都の観光PR事業「tokyo reporter 島旅&山旅」。

今回お声がけいただき、レポーターとして「島旅」を体験してきました。



私が今回足を運んだのは東京から南に向かって200km、八丈島と三宅島の間に位置する伊豆七島の一つである御蔵島(wikipedia)

三宅島とはこんな距離感
御蔵島といえばイルカ、イルカといえば御蔵島、ぐらいの勢いで有名なのがドルフィンスイム。
相当の高確率で、野生のミナミハンドウイルカと一緒に泳ぐ体験ができるのです。

今回の訪問時期は9月中旬、9/13,14,15ですからまだまだ水温も高め、もちろん私もドルフィンスイムが主目的に据えました。


御蔵島は「水と緑の島」を謳っているだけあり、ありふれた言葉で言えば「自然豊かな島」ということになるのでしょう。


しかし実際行ってみて感じたのは「御蔵島はそんな言葉には収まらない」ということ……。


まあ、言い換えるなら……
「野生あふれる島」
でしょうか。


自然、じゃないんですよねもはや。
いや確かに自然なんだけれども、人工物に囲まれて暮らす人間が思い浮かべるような自然とは、ちょっとした観光地でふれあえる自然とは、ちょっと佇まいが違うんですよ。
自然という言葉にはどうも収まりきれない気配。


野生。
圧倒的に野生。


御蔵島は、自然あふれる島に「観光客を温かく歓迎してくれるような素敵な施設」があり、そこに「ゆったりと滞在」し、滞在中に気が向いたら「豊かな自然の中からいいとこ取りをした体験」が出来て、素晴らしい旅の思い出が提供され、満足して帰途につける土地ではないんですよね。

御蔵島に暮らす人達は、眼前の野生を飼いならさずに、野生そのままにと共に生きることを選んでいるので、観光客もまた同じ精神を受け入れなくてはなりません。

そんな環境を自ら楽しめて、自ら体験しに行ける者だけが満喫できる島、それが御蔵島。
(ちなみに過去同じ気分になった土地として、小笠原諸島の母島を挙げておきます)

「イルカちゃんと泳げるんだって~♪超癒やし~♪」

みたいなノリで、うっかりリゾート気分で行ったら確実に心折れるんだろうな、そんな観光客が容易に目に浮かぶようで……

まあちょっと脅しすぎましたかね、そこまで覚悟がいるもんでもないですが、でもまあ、人を選ぶ島であることは確か。



さてその野生、御蔵島への上陸を目指そうとする時点から既に挑まなくてはなりません。
それは「波」。

多くの島において、生命線は船です。

船が安定して着岸することは、生活の維持につながりますから、いろんな工夫がされています。
台風レベルのすごい風が吹いたらもうどうしようもないとしても、ちょっとした悪天候、強風レベルなら使用に耐える港が必要なわけです。


こんな感じに港を複数ヶ所持っていて「風向きによって港を変える」島もあります。
あるいは、どの方向から風が来てもある程度避けられる湾があるとか、防波堤を組み合わせて港に波が入り込んでくることを防げるような港湾工事がされているとか。

しかしそれが無い場合は、どうなるか。
港が複数無いとか、湾も防波堤もないとかそんな状態。

当たり前ですが「港に船が入れない」状況が増えるわけです。
ちょっとした強風でもう、すぐ船が島に着かなくなってしまう。


さあ、御蔵島はどうだ?!?!……というと、まあ正直言いましょう「酷い」と。
申し訳ないが、あれは酷い。

いえね、御蔵島と同じ船で向かう三宅島、八丈島に過去に行った時に「なんか毎回御蔵島って通過されてるな」とは思ってはいたんですよ。
でも、そんなに深くは考えてはおらず「波が高くなりやすい海域なのかなあ、御蔵島大変だなあ」ぐらいの感覚だったんです。

でもね、全然違った。
そんな理由じゃなかった。
構造的欠陥がありすぎる。

御蔵島の港はたった1つ。
しかも湾もない、防波堤もない、島から1本だけ突端のように突き出た桟橋があるだけ。



ちょっとでも風が吹けばもうザッバンザッバン桟橋が波をかぶりまくり、人が立ち入れなくなり「はい、入港中止~!」みたいな展開にすぐなってしまう。

構造として、超、ひ弱!

これ、とある夕方に撮った桟橋の写真。


ちょっとした風でもうこんなに波かぶっちゃう。

こうなったらもう入港は出来ません。
接岸作業する人が波にさらわれてしまうから。

こうしてかなりの割合で、船は御蔵島を通り過ぎていくわけです。

というわけで御蔵島行きの船のチケットはやたらとこのハンコが押され、窓口で「条件付き出港ですがよろしいですか?」と聞かれてしまいます。


まあ要は「もしかしたら御蔵島着かないかもしれないけど良いよね、それわかって乗るってことでいいよね?ね?ね?ね?文句言いこなしってことよ?」というハンコですね。

そんなわけで、海が荒れやすい冬ともなれば、1ヶ月の間にちゃんと船が来た日が3割を切る、みたいなことは当たり前だそうで。

最近の船の発着状況は東海汽船のホームページから確認できますが、まあなんというか……


しかも、毎日来る船に乗っているのは、人と、郵便と、クロネコヤマトの荷物ぐらい。
いわゆる物資は1週間に1回の貨物船でやってきて、それですら寄港出来ないこと多数。
その間食料やら生活物資やら何やらは、切れっぱなし。
商店空のまんま。
(どうでもいいけど、郵便とクロネコヤマト以外の荷物、佐川急便などは貨物船に乗るらしい。というわけで御蔵島に荷物を送る時は郵便かクロネコヤマトがきっと便利。)


過酷。
何たる過酷さ。


ここは本当に、東京都なのか。


観光客なら「まあ残念ながらたどり着けませんでしたね」ぐらいのもんでいいですけど、これ島民の方はもう大変ですよね。
慣れてはいらっしゃるんでしょうけど、でも、それにしても。


だから、船の時間になるとアチラコチラ、見晴らしのいいところで双眼鏡片手に桟橋に船が着く様子を眺めているおじさんに出会います。




島の方に「あのおじさんたち何ですか」と聞けば「あー、日課(笑)」との答え。

最初は「何暇してんだこの人達」と思ったのですが、環境を知ればもう、仕方がない。
船が来るの、マジ切実。

そりゃ桟橋だけ映し続けてるカメラも意味あるわ、と。

島に行く前は、なんでそんなものが設置してあって、役場観光案内所のサイトから大きくリンクが貼ってあるんだと思ってましたもんね(笑)。


それにしても、考えてしまいますよね。
「防波堤ぐらい作れば?」って。


いやそれがねもう、また大変らしいんですよ。
島の外は突然切り立っていて、ズドーンと深い海が控えているという地形なもんだから、ものすごく深いところから地盤を作らねばならず超大変。

今ある桟橋ですら、日々の波の勢いで下の方どんどん削られちゃってるもんだから、しょっちゅう桟橋の近くの海底にコンクリの塊をガツガツ落として、削られないようにする工事をしているんだとか……いやもう、生活するにはすごい過酷な島ですよ、本当に。

江戸時代、まだ御蔵島が流刑地だったころ「ごめん、御蔵島過酷すぎるから、流刑地にすんのやめるわ」と言われてしまったぐらいの環境だそうで。

とはいえ島民の方は「この現代においてここまで野性味あふれるここが好き」なわけですからいいんのでしょうが、返す返すもここは本当に東京か、と思わずにいられないこの環境。
品川ナンバーの車が走っている様子が、どうも腑に落ちないわけで。

でも、島民の方と話していると「東京都でよかった」という言葉が時々出てきます。

「東京都という巨大自治体、予算が超たくさんある自治体だからこそ、こんな過酷な島に住み続けることが許されているんだと思う、他の自治体だったらきっととっくに無人島にさせられていたに違いない」と言うのです。

東京都だからこそ成立している住環境、そして観光業。


そんなこんなで、御蔵島は着くまでが既に大変。

そもそもそんなに余裕がある島ではないから、着いたとしても「宿が決まっていない人は入島できない」。
キャンプも禁止。

御蔵島観光案内所の方の名刺の裏ではこんなことがお願いされてました。


・宿の予約
・余裕のある日程 ←船が来ないこともあるから予定通りに帰れるとは限らないもんね♪

重要です。

そして観光客の種類も見定められていて、イルカの客と山登りの客(イルカ:山~9:1ぐらいらしい)以外は受け入れていないから「釣り人やダイビング目的の人は入島を認めない」。

イルカウォッチングもしくはスイミング、及び登山もしくはハイキング目的で、宿を先に押さえている人が、海況が良かった時のみ上陸できる島、御蔵島。

客を選んでる感半端ない。
心がけ悪いと上陸できないんじゃないかという不安感尋常じゃない。


そんなこんなで色々と書いてまいりましたが、2015/9/12夜に竹芝桟橋を出立した私は、ついに無事9/13朝に到着することが出来たのでした!

\バンザイ!/



このあとイルカツアー、ナイトツアー、ハイキング、とレポートは続いてまいります……。


■「tokyo reporter 島旅&山旅」について■
東京都の観光PR事業の招待で、御蔵島の取材をしています。tokyo reporter島旅&山旅について詳しくはコチラ
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