2015/10/26

ワンピース歌舞伎はエンタメ頂上決戦だった

「スーパー歌舞伎II ワンピース ONE PIECE」、通称ワンピース歌舞伎を見てきた。
見てきたのである。

1階席19列目である。
花道の真横である。

1幕目終了後にかかる定式幕。ちょうかっこいい。気分がアガる。


ワンピースと歌舞伎、それなりに好きだが大好きというほどでもない。
私の中ではどちらも、何か他にもっと好きなことがあれば優先順位が下がってしまう程度の存在である。
だから、組み合わさった相乗効果で「行かずにいられない!」と勢いがつく程でもなかった。
「ワンピース歌舞伎」という言葉の響きが私にもたらすものは、その程度のはずだった。


が、今回何か予感がしていた。
これは見なくてはいけないもののような気がする。
逃してはならないもののような気がする。

よくわからない強烈な直感。
それを裏付けるように、自分の身の回りでワンピース歌舞伎の評判が見え隠れし始める。

…………行くべきか?
どうせ見るなら奮発して、1階席で、しかも花道の近くで。
チケットと、特製弁当と……積み重ねていくと軽く2万超えてしまう。

2万、高い……いやしかし、この説明できない衝動に、私は賭けた。
よし、行くぞワンピース歌舞伎!
ゴーストが見ろと囁いているぞ!(笑)
2万、張ろう!


しかし、新橋演舞場の入口をくぐってから3~4時間後、2万が高いと悩んでいた自分はどこへやら、2幕目終了時点、3幕目がまだ残っているタイミングで既に「もう1回見てもいいかも……!」と真剣に検討し始めるほどの心境に至っていたのである。


すごいとかやばいとか面白いとか感動とかそういうものを超えた、圧倒的な「元気をもらった」「パワーをもらった」感覚。
下手な旅行よりもよほど、ストレスが芯から抜けていったような爽快感。
時に涙が滲み、大笑いし、自分でもわかるぐらい目をキラキラさせながら見入り、最後「良いものを見せていただきました」と拝みたくなる感覚。
とにかく「最高だった!」という言葉しか出てこないほどの興奮感。

どこが良かった、誰が良かったなど細かく上げていけばいくらでも語れるけれど、そういう一つ一つの素晴らしさを語る以上に「とにかく良かった、凄かった」とまず第一声で言いたくなる強烈なこの感覚を、とにかく多くの人と共有したいという感情が、強く強く沸き起こったのである。

頭空っぽにして「うわー楽しい!」って心から思えるのがエンタメで、そういう気持ちに観客を持っていくために手間を惜しまない余りあるプロたちのサービス精神と本気を、存分に浴びたという気になれる。
原作の再現性とか忠実性とか、演出がどうのこうのと細かいことはね、もう、どーでもいい。

この空間には「ハレ」しかない!という歓喜。
あふれんばかりの祝祭感を全身で受け止める充足感。

2015年現時点でのエンタメ界の本気、しかと受け止めた、満足である!という気持ちでお腹いっぱい。
ワンピース歌舞伎は、人気マンガを題材にした、歌舞伎だけれど、フェスで、ショーで、祭りで、熱量の塊だった。

だから、そんな気分で見るとサイコーに楽しめると思う。
「とにかくスゲー」って浴びる感じ。
そういう思いにさせてくれたワンピース歌舞伎、マジありがとう、マジ歌舞伎リスペクト、それが自分の中では一番大きい。

……とここまで読んで、ちょっと見に行っちゃおうかなと思い始めた方が一人ぐらいはいるだろう、ということで勝手に先回りして「とは言えさあ……」と沸き起こる不安と疑問について、解説していきたいと思う。


<1>チケットはどこで買うの?
ネットとか、電話とか、コンビニとか、色々なところで買えるようになっている。
一番買いやすい手段で選べばいいと思う。売り場によっての差はない。
チケット情報→ http://www.onepiece-kabuki.com/
※ちなみに私は「チケットWeb松竹」でネットで購入。

それと、現時点では既に土日のチケットはかなり厳しい。
だが、平日半休をとってでも見に行く価値があると私は感じたので、思い切って欲しいなあと願う。
おすすめは、高いけど1階席。
歌舞伎に使うのも変だけれど、ワンピース歌舞伎はグルーブ感がとにかく高い。
そのグルーブ感を肌身で体感したければ、1階席だ。
他の席だと「いいなあ……」と、ちょっと遠く感じてしまうことになり、そこには体験価値の圧倒的な差が横たわっていると思う。
奮発できるなら、迷うぐらいなら、1階席をオススメしておきたい。

2幕目終わって、USJや富士急ハイランド真っ青レベルでずぶ濡れ(笑)の人が羨ましく思えるはずだから。
スタンディングの観客の中に、混ざりたいと思えるはずだから。



<2>歌舞伎一回も行ったことないけど大丈夫かな、わかるかな?
大丈夫。
まず、台詞はほぼ現代語なので、言っている意味がわからないということはまずない。
歌舞伎特有の言い回しは、語尾に使われるのが中心だし、そもそも「今わざと歌舞伎っぽくしてるな」ということがわかるので苦にならない。
現代劇感覚で見られる。

ただし、知っておいたほうが「より楽しめる」ことはあるから、それを列記しておきたい。

一番重要なのは一人2役、3役の人がいることだ。
現代劇だとすぐわかるのだが、歌舞伎だと衣装とメイクが相当変わるので、慣れていないと「同じ人が演っている」ことに気づきにくい。

例えばルフィ(主人公/男)とハンコック(主要人物の一人/女)と赤髪のシャンクス(最後一瞬出てくる/男)は、座長である市川猿之助が一人で全部演じている。
原作に多く登場する、ルフィとハンコックが舞台上で言葉をかわすシーンはどういう工夫で対処されるのか。
ルフィ、ハンコック、ルフィ、ハンコックと場面転換の度に衣装替えメイク替えして出てくるという頻発する早変わり。

歌舞伎ファンが「登場しただけで大拍手」するのは、多くの場合こういう「演出の工夫で物理的にありえない状況を実現」や「早変わりの見事を賞賛」みたいなことだったりする。
これがわかっていて「あ、だからみんな大喜びで拍手してるんだな」と思うのと、「なんでみんな拍手してんの?」と思ってしまうのとは楽しみ方に差が出るので、わかっておいたほうがお得。

「いよっ!待ってました!」満喫できるか出来ないかは、それなりに差だと思うから。

ルフィ/ハンコック/シャンクスの他に、ゾロ/ボン・クレー/スクアードを坂東巳之助などなど、2役以上こなしている役者さんが何人もいるので事前に確認しておきたい。
主要配役→ http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/2015/10/ii_1-ProgramAndCast.html

ちなみに世の中には親切な方が沢山いて、こんな解説画像を作ってくださっている。
2つの画像をプリントアウトして持参すると、当日便利なんじゃないかと思う。
https://twitter.com/chi22e/status/656334775028871168

それにしても坂東巳之助さんのボン・クレー(オカマ役)が凄かった。
完璧なまでにボン・クレー。
あのテンションで1日2回まじ大丈夫なのかと心配したくなるほどのテンションで本物以上に本物のボン・クレー。
冒頭は青いかつらでゾロを演ってたはずなのに、そんなこと微塵も感じさせない、違う役者にしか思えないレベルでボン・クレー。
まさか、完璧なるオカマが踏む歌舞伎の六方を見ることがあるとは思わなかった!

他に、いわゆる歌舞伎役者さんではない方も舞台に立っている。
福士誠治さんと、浅野和之さんなど。
彼らがまた、歌舞伎っぽい動きをこなしているのも「ほほー」って感じだし、また歌舞伎役者じゃないからこそ、歌舞伎役者さんとの「型の違い」が際立っていて、演出にそれが生かされていてそういうのもまた見ていて面白かったり。

こういった配役の妙以外にも「このシーンは歌舞伎で言うと○○○の応用で……」みたいなものが幾つもある。
その辺りは市川猿三郎さん自らの解説ブログを読んでもらうのが良いと思う。
http://blogs.yahoo.co.jp/enzaburou/39649866.html

それにしても当然歌舞伎だから、舞台上にいるのは全員男性。
しかし、男性と女性とオカマが入り乱れて舞台上で踊ったり戦ったりする中で、きちんと「あれは男性、あれは女性、あれはオカマ」って完璧に見分けられるのだ。
それがすごい、とにかくすごい。
「歌舞伎役者の女とオカマの本気を見よ!」と言われて
「しかとうけとめた!」という気分。
そこには感嘆しか残らないのである。



<3>原作読んでおいたほうがいい? それとも読まないほうがドキドキできる?



個人的には「原作情報が頭に入っておいた方が良い」と思う。

ちなみに上演中、わかりにくい背景説明は、ちょいちょい「説明しよう!」みたいな感じで、役者さんが突然説明してくれるシーンが随所に挟まってくる。
だから、ワンピースを全く知らなくても、きちんと分かるようにはなっている。

ただストーリーはわかるけど、登場人物の設定をある程度知っていたほうが「悩む時間が少なくて済むから、作品を楽しむ方向にのめり込める」ので、私は事前予習をおすすめしておきたい。

ネタバレサイトを事前に見ても、別に問題ないと思う。
そもそも歌舞伎自体が「型」を楽しむ傾向で「わかっていてもなお楽しい」ものだから、わからない要素が多いと「楽しむべき定番ネタ」がこぼれてしまい、満喫できなくなってしまう。
であれば、背景もストーリーも全部わかった状態で「歌舞伎としての面白さ」を存分に浴びるほうが、より楽しめるんじゃないかなーと私は感じた。

とはいえ、原作全部読んでおけ、と主張する程でもないなーと。
だって単行本51巻から60巻部分って……該当部分だけでも11巻あるし、やっぱり1~50も読まないと登場人物もわかんないし、ってなって結局60冊?
ちょっとその物量をこなすのは考えづらい。

ということでオススメなのは「主要人物の人物像、背景をネットでサラッと確認しておく」ことだ。
そしてこれも世の中には親切な方が沢山いて「○分で分るワンピース」みたいなものをたくさん作ってくださっているので、wikipediaやらNAVERまとめやらなんやらで、登場人物をなんとなくわかっておけばいいと思う。

とりあえず主要人物はこれで理解できるかなー
http://zakuro-yk.seesaa.net/article/137695937.html

これさえ頭に入っておけば、他の登場人物は比較的しっかりと説明されるので(名乗りっぽいものがあったりする)どうにかなると思う。
オススメなのは、現地でパンフレットを買うこと。
パンフレットに載っている情報で、だいぶ脳内補完されると思う。



<4>なんだかんだで全部で5時間、長すぎない?
大丈夫。
割とあっという間。

大丈夫だけれど、2回ある30分の幕間休憩を効率よく楽しむために、お食事系は事前予約がオススメ。
正面入口左の方の空き地に屋台がある
当日新橋演舞場に行くと、会場の脇にお弁当屋さんみたいな屋台が建っているので、そこでお弁当を買っておいて休憩中に座席で食べる(歌舞伎は休憩中は席で飲食OKなのだ)か、1幕目と2幕目の間に食堂で食べる定食を予約しておくかがおすすめ。
ワンピース歌舞伎は、いわゆる歌舞伎ファンの比率が少ない分、食堂がちょっとだけ空いている印象だった。
もちろん外で買ったお弁当を持ち込むのも大丈夫。
そうすると、バタバタせずにご飯を食べられて、あとはゆっくり物販なり何なりを見て回ることができる。



普通の歌舞伎と違って客層が色々。男性も普段より多い。

まあ、とにかく難しく考えないで楽しむことが一番だと思う。
「楽しみに行く」姿勢、重要!

何か最近多くないですか「評価してやろう」姿勢で臨む鑑賞態度。
もうね、そういうの、ワンピース歌舞伎には必要ないから。
頭空っぽにして「楽しみ尽くしてやる!」って、行くのが良いと思う。

こっちが観客のプロとして行ったらね、向こうもエンタメのプロとして存分に返してくれる。
評論家のプロじゃなくてね、観客のプロとして絞り尽くしても、まだ底が見えない懐の深さを、歌舞伎が感じさせてくれる。


最近、漫画・アニメ・ゲームを中心としたオタク系といわれる作品を、良くない手触りで触れてきて、ファンから総スカンを食らうということが度々発生する。
ワンピース歌舞伎にはそれがなく、違いはどこなんだろうと考えたのだけれど、一つ大きなポイントがあるとしたら「歌舞伎というある一つの頂点を極めているプロである」人達の手触りであるということだ。

多分、オタクが怒る「ニワカ」は、対象作品に対する愛が中途半端なだけでなく、本人(あるいは組織)自体も、なんだか中途半端なのではないか。
中途半端な奴らが中途半端な手触りで、俺達の愛するものに触れてくるから「ふざけんな!」という怒りが爆発するんだろう。

でもワンピース歌舞伎は、頂点を極めた奴らが、漫画の頂点の一つである作品に本気で挑みに来ている、というガチンコ感があった。
ワンピースそのものへの理解が薄い役者さん、スタッフさんもいただろう。
でもそういうのはどうでもよいほど、よくわからないなりにもワンピースという最高峰の漫画という存在へのリスペクトが感じられ、そこに歌舞伎の本気をぶつけてきている様が眼前に繰り広げられる姿は、圧巻だった。

そこで繰り広げられているのは原作の世界観の忠実な再現ではなく、歌舞伎が見定めたワンピースの本質の再現。

頂点にいるものにしか見えない世界がぶつかり合っている感じ、その衝撃が生み出すものすごい熱量。
ただただそれに圧倒され続ける、最高の4時間半。


コンテンツタイアップ……と最近気軽に口にされるのを耳にする。
愛があるタイアップはファンからは嫌われないが、ある意味ファンの期待値以上のものは作れていないのかもしれない。
愛以上に、タイアップ側もまたプロとしての本気をぶつけてきたら、そのとき初めて新たな価値の想像までたどりつくのではないか。
そこまで行けているタイアップを作り出せているのだろうか、コンテンツをただただ利用尽くしてやることしかできていないのではないかと、プロモーションの業界にいる人間として非常に考えさせられたのだった。



それにしても終わってみて、原作も読み返したいし、他の歌舞伎も見たいし、あーもう色々見たいものが増えて人生楽しいなって本気で思い、それが最高に幸せな心持ちだった。
2万円、全然惜しくなかった。
倍返し、三倍返し、もっともっと返されてると思う。


至福の時間、本当にどうもありがとうございました!(東銀座に向かって深々と礼

2015/10/02

<御蔵島>宿泊編 ~tokyo reporter 島旅&山旅~

一番最初に「御蔵島は宿が決まっていないと入島できない」「キャンプNG」という情報を書きましたが、その御蔵島において一番キャンプ環境に近い、安く泊まれる場所、それが今回私が宿泊した「村営バンガロー」になります。

村営バンガローは港を見下ろせる海のそばにある広場にあります。
船は朝6時前後に到着しますが、その段階ではチェックインは出来ません。
10時を過ぎると、観光案内所で鍵を貰えます。

私の場合は

9/12の22時にに竹芝桟橋から橘丸で出立
 ↓
9/13のだいたい朝6時に御蔵島到着、イルカガイドのスペシャルオレンジさんが港に迎えに来てくれて、バンガローまで連れて行ってくれる
 ↓
しばらく暇(すでにバンガローにいるお客さんが朝ごはん分けてくれたw)
 ↓
8時半から漁港の湾内でシュノーケリングの練習
 ↓
練習後、観光案内所に行って鍵もらってチェックイン
 ↓
島内のカフェで昼ごはん
 ↓
ドルフィンスイムへ
 ↓
水着他色々洗って干す
 ↓
島内のカフェで夕ごはん
 ↓
ナイトツアーへ
 ↓
シャワー浴びる
 ↓
寝る

みたいな初日でした。


何かこの写真デジャブですかね。
そうです、港に船が来るかどうか島のおじさんたちが望遠鏡片手にやって来る広場です。

ちなみに、村営バンガローは、御蔵島集落の中では標高が低めのところにあります。
が、南海トラフ地震が来た時に、一番大きい津波が来ると言われている御蔵島、予想では28Mらしいのですが、集落で一番低いところで標高40M。
バンガローはさらにちょっと上の方なので、低いと言っても結構な高さです。
だからこの見晴らし。

周りを見渡すと、ヤモリとかトカゲとかヘビもいます。


蚊とかGとかはいませんでした、逆に。
ヤモリが食べてくれてるのかなー。
なので快適。

写真の真ん中~右で縦に並ぶ小屋が、トイレとコインシャワーです。

街灯の右下あたりにあるのが水道で、ここで海に行った後のシュノーケル三点セットとか、ウェットスーツ、水着なんかを洗い、干すことが出来ます。


シャワーは2分100円、お湯も出ます(最初の20秒ぐらいちょっと冷たいけど)。
こういうところのコインシャワーにしては、水量もたっぷりあって満足度高めです。


宿泊するバンガローはこんな感じです。
全部で5棟あります。
まあ、表現としては「綺麗な高床式倉庫」的な?

中身はこんな感じ。



ツルツルピカピカフローリングです。
非常に衛生的で、綺麗に使われています。
もちろん私も綺麗に使います。


ただ、設備は写っているもの以外は何もありません。
まあ、ほぼキャンプ場ってことですね。
料金は1泊2000円もしくは3000円(棟によって違う)。
ひとり増えるごとに500円追加です。

寝袋を持参するもよし、観光案内所でいろいろ借りる(レンタル品一覧PDF)もよし、です。
どうでも良いんですけど、レンタル品一覧にある「発砲クーラー」が気になって気になって……単なる「発泡」の誤字だと思うんですが、なまじオオミズナギドリを11月に捕まえて食べる、とか教わってる分「う、撃つの?」と思いたくなってしまい(笑)

さて、冗談はさておき私はマットとタオルケットを借りました。
マットはこういういわゆるアウトドア用敷マット的なやつです。


私は離島に行くときはいつも、大きめの布を数枚持参するのですが、それがこんなところで役立ちました。2枚使ってシーツ代わり。


この上に、バスタオルに手ぬぐいを撒いた枕と、借りたタオルケットで寝ました。9月中旬であれば、それで十分快適でした(むしろちょっと暑かったぐらい?)


食事はキャンプ品借りて自炊するかなーとも思ってたんですが、調味料持参するのも面倒だなと思って(スボラでごめんなさい)、全て外食することにしました。
というわけで、今回の旅では昼夜全て外食なんですが、食事の話はまた別途。


ちなみに、今回一番困った、というかはまったのはケータイの電波。

御蔵島には光回線が来ていないんですよね。
島を取り巻く環境が過酷なこともあり、光ケーブルが来ません。


まあねえ……もと電話屋職員としては、島内の電話線を見上げながら「光、来てないな……」とは思ってましたけどね(笑)。

そんなこんなでケータイの電波も、基本的には近くの三宅島からもらっている状態。
キャリアによっては中継設備を置いてはいるものの、それでもLTEなどは遠い夢の話。

というわけでまあ、スマホのネットが繋がらない繋がらない……三宅島が見える方向に開けてないと、まあ繋がらない。

だから、バンガローで部屋に入っちゃうとむしろケータイがつながらず(笑)、見晴らし台みたいなところでネットせざるを得ない、しかも遅い、みたいな展開になりました。

でもね、これ、「リアルタイムにレポートしようと思ってたのに!」と思うから不便だったんです。
逆手に取れば「御蔵島いるので連絡つきません、さようなら」って、都会の喧騒から離れられますからねー、素晴らしいですよねー(邪心


そうそう、御蔵島にはバンガロー以外にも様々な民宿があります。
その辺りの情報はコチラからご確認ください。


■「tokyo reporter 島旅&山旅」について■
東京都の観光PR事業の招待で、御蔵島の取材をしています。tokyo reporter島旅&山旅について詳しくはコチラ
#tokyo島旅山旅 #御蔵島

<御蔵島>オオミズナギドリ目視編 ~tokyo reporter 島旅&山旅~

御蔵島には「オオミズナギドリ」という海鳥の渡り鳥が、3月~10月の子育ての時期になるとやってきます。
その数なんと70~80万羽。
すごい数です(ただこれでもだいぶ減ってしまったのだそう)。

御蔵島では「カツオドリ」とか「カツドリ」と呼ばれていて、それはオオミズナギドリがいる辺りにはカツオがいるから、ということから来た名前です。
正式名称がカツオドリという鳥もいますが、アレとはまた別です。


9月は正に子育ての時期にあたっているということで、ナイトツアーを申し込むとオオミズナギドリが見られる、というので参加してみました。

ただこういう自然観察系ナイトツアー、運が良くないと「今日は何も見られませんでしたねー」で終わることが多いのも事実。
割と運は良い方で、色々なものと遭遇出来ているとは思いますが、それでもやっぱり「見られるのかなー本当に」という気持ちは拭いきれません。

しかしガイドさんは
「たいてい地面に落ちてますから見られますよ」
と、乱暴なセリフ。



落ちてるって、なに。


しかし、説明を受けるにつけ、段々と理解できてくる、その……「まあ、落ちてるんでしょうね、オオミズナギドリなら」と納得してしまうそのどうしようもない習性!!!


いやそんな感じで今までよく生きてこられましたね、と突っ込まざるをえないのですが、御蔵島は実は「哺乳類がいない島」だったりします。
今でこそ、人が持ち込んでしまったネズミや、猫が野良化した野ネコがいるものの、基本的にはオオミズナギドリを捕食するような外敵は、御蔵島にはいないのです。

だから、脳震盪を落として、地面の上でしばしボーッとしていてもどうにかなる、のです。
そんなバカなと思うかもしれませんが、なるのです。


そして本当に落ちていました。


真ん中に佇んでいる奴、正にこいつ、オオミズナギドリです。

写真からはよくわからないかもしれませんが「真っ暗の夜の林道」で「煌々と車のヘッドライトで照らされ」ているにもかかわらず、逃げることもせずにボーッと落ちたまま状態。

あまりにも動かないので、轢くわけにも行かず車のほうが止まりました。
ほんとうに大丈夫なのかこのトリ……
警戒心、以前。


ちなみに、オオミズナギドリ本当に大丈夫か、と思わざるをえない逸話は他にもあります。


地面からだと、飛べないって……本当に、本当にお前大丈夫なのか、と揺さぶりたい気分になりますが、海だと華麗に滑空するカッコイイ鳥なので、なんともいえません。

なんですかね、職場でイケてるけど家ではさっぱりなお父さん的な?


とまあそんな感じで、この日は合計7羽ほど、道路に落ちているのを目視することが出来ました。すげーあっさり見られました……いやー、マジでアホの子でコチラは楽しかったですけどね、種族としては本当に心配になります。


そう、それからナイトツアーとしてはこの他に、光るキノコを見たり(光が弱すぎてiPhoneレベルでは撮影不能)しました。晴れているときは星空もすごく綺麗なんだとか。


ところでオオミズナギドリ、御蔵島には子育てのために来ていると冒頭に書きました。
それはつまり、御蔵島にはオオミズナギドリの巣立ちシーズンがあるということです。

時期にして11月前半、文化の日前後がシーズンらしいのですが……


「そこら中にうまく飛べない巣立ち前の若鳥が落ちまくっている。ボタボタと」


という状態らしく(笑)。
いや、もう、笑いますよ、話聞きながら吹き出しましたもん。

ちなみにその時期だけ、実は御蔵島に解禁されるものがあります。
「うまく飛べなくて巣立ち前に地面に落ちてるオオミズナギドリを捕まえる」ことです。


捕まえてどうするか。


食べます。


美味しいのか?


人による、そうです(笑)。



11月前半の特定日にだけ解禁される、オオミズナギドリの若鳥捕獲大作戦&調理、ちょっと気になりますよね……かわいそうなような、食べたいような……

そんなこんなで御蔵島の夜は更け、初日が終了したのでした。


■「tokyo reporter 島旅&山旅」について■
東京都の観光PR事業の招待で、御蔵島の取材をしています。tokyo reporter島旅&山旅について詳しくはコチラ
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<御蔵島>イルカ遭遇編 ~tokyo reporter 島旅&山旅~

午前中の練習タイムを終え、ランチを食べて、午後に。
イルカと泳ぐためのスキルチェックも万全、さあ行くぞ御蔵の海へ……!
改めて、御蔵島観光案内所さんのドルフィンスイムの注意事項を確認しておきましょう。



さて、2015/09/13の午後は生憎の小雨。
やや、波あり(一番高い箇所で3Mぐらい?)
でも、決行です。
これぐらいならイルカを諦めるほどではありません!
(だからこそ、安全自己管理は重要)

船の上で、ガイドさんが船から海に入る時のやり方を教えてくれて、それをしっかり頭に叩き込んで、出立です。


さて、実は前の記事のシュノーケリングレッスンの間、ガイドさんがコッソリ「koedaさんはある程度泳げるみたいだから、よりイルカと泳げるためのコツも教えますね~♪」とおっしゃってくれました。その内容がこんな感じ。


「そりゃいいこと聞きました!」と実践したところですね…………いやもう、本当でした。

最初のうちは、海の上を進めど進めどイルカに会えず。
でも、イルカの群れとあってからは、もうすごいすごい!

本当に、イルカが目を合わせて寄ってくる!
(多分、こいついじれるいい獲物ぐらいにしか思ってないんでしょうけど)

そして、一緒に泳いでくれたりする!

なんだこれ超興奮!
イルカまじかわいい!
最高だ!


……と、いう頭のネジが一本飛んだ状態の人間が動画を撮るとどうなるか(苦笑)。
ブレッブレですorz

ま、まあまずはご覧ください、ドルフィンスイム動画!


はい、私は次に見事に課題を残しました。
「ちゃんと見られるドルフィンスイム動画を撮影できるようになる」という課題を……。
近いうちにまた個人的に御蔵島行こうと思います。

なんせ、一番うまくいるかと泳げたと思っていた時が、一番ぐちゃぐちゃの動画でしたからね(笑)。
あまりにも酷いので、上の動画からは素材として外しました。
自分の動画見てて酔って吐くかと思いましたよもう、本当に。


さて、どんなコンディションで泳いでいたかの説明もしましょう。

動画に写っている他の参加者の皆さんはウェットスーツを着られてますが、私はラッシュガードのみで泳いでました。水温的にはギリギリですかね。水の中にいると平気ですが、船に上がるとちょっと寒いぐらいの感じ。

それから、ラッシュガードの状態でウェイト1kgつけてました。
ウェイトというのは


こういうことです。
イルカと水中でよりゆったり安定的に泳ぐために装着します。

今回ウェットスーツを着ていなかったので、ウェイトは要らないかなーと思ってたんですが、ガイドさんが「着けてみたらどうですか」とおっしゃるので、試しにやってみたのでした。

ただ、ウェイトって

というバランスでつけるのが、ドルフィンスイム的にはちょうどいいんですが


「まあ2kgかなあ」と言われて着けてみたら、ものの見事にすげー沈みました。
生きものとして見た目の想定より比重が高かったみたいです(笑)。
というわけで、1kgに。

ただ、ウェイトってつけるとやっぱり疲れやすくはなるんですよね。
しかも水面を浮かび泳ぐだけではなく、かなりの頻度で潜るから、さらに疲れます。
ちなみに私以外の参加者が6名、その内2名が最初だけウェイトをつけていて2本目からは外し、という状況。

私も海に入るタイミングが7本あったのですが、最後の1本はバテてしまって船の上でお休みしてました……残念。


そうそう、御蔵島のドルフィンスイムは、イルカ保護の目的もあって、いろいろな制限があります。

1回につき2時間以内で、海に入れるのは8本まで。
1本につき、大体数分です。
入ったは良いものの、イルカがスーッとどこか通りすぎてしまい、1分も立たずに上がる羽目になることもありますが、まあ野生だから仕方ありません。

イルカとそうそう遭遇できるわけもなく、普通は5~6本で2時間になってしまうのが多いんだとか。という意味では今回、7回もチャンスが有ったというのはラッキーだったのでした。
しかも毎回じっくり一緒に泳げましたし。
いやー、ついてたついてた!
ついてましたよ!


余談ですが、翌日の朝、2015/09/14の朝はもっとすごかったらしく……島の方によると「1回入ったら20分ぐらい上がる必要ないぐらいイルカが来まくってて、正直お客さんは喜ぶというより疲れてぐったりしてた」だったとか。
ちょっと見てみたかったなあ。


さて、御蔵島のイルカ、実は全部個体識別されています。
現時点では125頭。
2015年は10頭
名前も付いてます。

いるかいないか」という御蔵島のミナミハンドウイルカ紹介本&DVDがありまして、そちらで確認することもできるのです。



結構イルカは特徴的な傷がついているので「あっ……今日見たやつ、こいつだ!」とかわかったりするんですよね~。それがまた楽しかったり。
御蔵島のイルカチームのFacebookページで、最新情報も確認できます。

で、見ているうちにまた行きたくなるという。
(そして、撮影力を上げなくてはとますます心に誓うという)


それにしてももう、桟橋と港の環境が過酷だろうと、包み込むような大自然というより挑んでくるような野生だろうと、このイルカとの遭遇があるならもう何でも乗り越えますよ!!!!!、という気持ちでいっぱいでした。


とまあ、大満足の中ドルフィンスイムツアーが終わりを告げるのですが、御蔵島の旅はまだまだ終わりません。

次は「アホの子オオミズナギドリ」をお届けします。


■「tokyo reporter 島旅&山旅」について■
東京都の観光PR事業の招待で、御蔵島の取材をしています。tokyo reporter島旅&山旅について詳しくはコチラ
#tokyo島旅山旅 #御蔵島

2015/10/01

<御蔵島>イルカ準備編 ~tokyo reporter 島旅&山旅~

御蔵島でイルカと泳ぐにはどうするか?

必要なのは3つ、「宿と船とイルカガイドの予約」。
宿と船が決まっていなくては島に入れず、イルカガイドが確保できないと海に出られません。

ただし、ネットでちょっと検索してみればわかるのですが、その3つがセットになっているパッケージツアーが沢山あります。
御蔵島の宿&ガイドが主催するツアーもあれば、島外のダイビングショップが主催するものなど、色々です。自分に合いそうなものを選ぶのがいいでしょう。

ところが今回の私は「船と宿だけ先に決まっていて、御蔵島についてから何をするかは自由!」という状態だったため、ガイドだけ個別に選ぶ必要がありました。

というわけで、御蔵島のイルカガイドを決めるべく、御蔵島観光案内書のガイド情報を見たところ……


広瀬、やたら多くね?


この疑問、御蔵島についても私の脳内から去ることはなく、結局現地で「観光案内所のホームページ見てたら、やたらと広瀬さんが多いなと思ったんですけど……」と聞きました。

聞きましたとも。
気になるもん。

で、判明したのは「御蔵島の半分は広瀬さん、次に多いのが栗本さん、徳山さん。あと井上さんと西川さんと小林さんが1組づついて、それ以外の苗字の人はみんな外から最近来た人」ということでした。

そして、広瀬さんがやたらと多くなってしまったのは「本州からの移住者が増えたタイミングで、広瀬が2家族いたので、婚姻を重ねる中で自然と増えてしまった」からなんだとか。
なんという苗字事情。


というプチ情報はさておき、ガイドを選ばなくてはなりません。
まあとりあえず、ネット経由で問い合わせできるところにメールを送ってみて、OKだったところに決定。
こちらはスペシャルオレンジさんというところで、ホームページを見ていると御蔵島に移住してきた方のようだな、と。

旅程的に2回ツアーに行けそうだったので、じゃあ2回目は元々地元の人っぽいところに頼んでみようかな、ということで「広瀬という人は地元の確率が高いだろう」とあたりを付け、なんとなく直感で第五惣栄丸&吉栄丸さんに決めたのでした。



さてここでドルフィンスイムについて解説しておきましょう。

いるかと泳げる……と聞き、色々検索して出てくる写真を見ていると
「素敵……♪」
「いやされる……♪」
と、なんというかゆったりとたゆたえる素敵タイムが待ち構えているように想像しがちですが、そう上手くは行きません。


ドルフィンスイムはかなりハードな遊びです。
割と傾向としては体育会系のイベントです。

そして必要なのはシュノーケリングスキル、できれば素潜り(スキンダイビング)のスキル。

いわゆるダイビングのスキルは必要ありません、というかぶっちゃけそのスキルは使えません。
というのも、タンクを背負ってブクブクアワを出しながら移動するダイバーに、イルカは寄ってこないから。
フィンとマスクとシュノーケル、シュノーケリング三点セットを身に着けて、身一つで海に入って自力でイルカと泳ぐのがドルフィンスイムの実態。

このイメージと現実のマッチングが上手く行かず、ドルフィンスイム船の上で「もう何も信じられない」という表情で、死人のように横たわる参加者を、私は過去何回も見たことがあります(白目)。


御蔵島周辺に生息する百数十匹にのぼるミナミハンドウイルカ達は、確かに人懐っこい性質で、人間と遊んでくれる愉快な子たちです。

でも、野生の生き物である現実は動かし難く、その野生のイルカの生活空間に一瞬だけ混ぜてもらうということは、まさにその野生と向き合うということに他なりません。

御蔵島が「自然豊かな」ではなく「野生あふれる」島であるということを、ドルフィンスイムは最も突きつけてくるのです。


さて、今回ガイドをお願いしたスペシャルオレンジ船長の高畑さんは、ドルフィンスイム初体験者に、野生と向き合うことを事前にしっかり叩き込んでくれるタイプのガイドさんでした。

ドルフィンスイムに向かう前に、練習タイムがあるのです。
何を練習するかといえば、シュノーケリングの基礎。
マスクとシュノーケルとフィンをつけて、海で泳ぐ練習です。
この日はドルフィンスイムは午後、ということで午前中に練習をしました。

そして、ドルフィンスイム特有の重要事項があるので、とにかくそれが徹底されるのです。


ちなみにそれ、どこで練習するかなんですが……

御蔵島はこの通り、海に向かってストーンと落ちている島でして、浜というものはありません。
基本、崖からいきなり深い海。
島中だいたいこんな感じ。


なので実は、御蔵島の子どもたちは海ではあんまり泳がないんだそうです。
怖いから。
そもそも子供が気軽に泳げるような海など無いんですね。

唯一あるのが、漁船用の港の防波堤で区切られた中。
この中で、船が入ってこない区域では泳いでいいことになっています。



ま、でもここも、大体3~5メートルぐらいの深さはありましたね。

こんなところで小一時間ほど、シュノーケリングの基礎、立泳ぎの基礎、ドルフィンスイムの備えをトレーニングされて、合格になった人のみこの後のドルフィンスイムに参加できる仕組みです。


合格できなかったら……?
残念ですが、船の上から見るだけになります。
泳ぐの禁止。
危ないから。


野生の環境に出るということは、命の危険レベルもアップするということ。
事故につながります。
自力で対処できる能力がないと判断されたら、お断りされるのも、御蔵島のいいところでもあり、厳しいところでもあります。
お客さんだからといって甘やかしはしないのです。


ただしその分、イルカと出会えた時、イルカと泳げた時、イルカと遊べた時の感動は、この上なく大きなもので、喜びもひとしおなのです。
そして、ハマるのです(笑)。


さて、この後はドルフィンスイムレポートへと続きます……


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東京都の観光PR事業の招待で、御蔵島の取材をしています。tokyo reporter島旅&山旅について詳しくはコチラ
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